ミーハーで蛇足な日記帳もどき。ALFEEを中心に音楽ネタが多いですが 、基本的に何でもアリで節操ありません。
2010/10/14 Thu 21:42
 前回の予告通り、今回は映画『十三人の刺客』についてまたまた語りたいと思います。「またかいっ!」と思う人も多いでしょうけど、その通り"また"です(笑)。多分、これでラスト語りになると思うのでお見逃し下さいっ。
 いや~、こんなに作品について語りたいだなんて『KINGDOM OF HEAVEN』以来ですわ。そういえば、『KOH』は特典映像付きのDVD及びBlue-Rayのリリース情報が相変わらず聞こえてこない…。むむ、狐に対しての不満が再燃してきそうだ。

 『十三人の刺客』についてはblog内で十分過ぎる程に語っています。
 ■作品の感想→9/20付けのblog(ネタバレ無し)
 ■キャラ語り→10/4付けのblog(ネタバレ有り)

 今回は個人的に印象に残った場面を絡めた大本命の殿語り(笑)をしたいと思います。当然のことながら作品のネタバレ全開ですのでご注意下さい。殿は前回までにも語っているので、同じ場面などは割愛します。

映画『十三人の刺客』 自分が稲垣吾郎ファン、市村正親ファンであるので当然と言えば当然なんですが、"明石藩絡みの殿のシーン"は全体的に印象が強いです。

 暴君・斉韶の残忍ぶり描写がインパクトあり過ぎるというのも差し引いても、封建社会の歪みを誰よりも理解し人生に飽きてしまっている斉韶の孤独感や、暴君と理解しながらも仕える主君として守り通す家臣の虚しき姿は堪りませんでした。

 まず、松平斉韶(稲垣吾郎)が中庭で間宮図書(内野聖陽)の家族を自ら弓矢で皆殺しにする場面。

 駆け付けた鬼頭半兵衛(市村正親)が制止するのも聞かずに、斉韶は正に的を射るかの如く次々に躊躇いも無く矢を放ち、途中で弓を半兵衛の肩に押し付けるように手渡するところで、私は弓で口煩い半兵衛の頬でも打つのかと思ったのですが、斉韶は「しっかりと弓を預かれ」と態度で示した後に「侍とは何か?」と哲学めいたことを語り始め、どうして自分が間宮の家族を皆殺しにするのかを正当化してみせました。
 しかも、最後の一人に留めを刺した後、「徳川の世もそんなに長くないな…」と言って半兵衛から「滅多なことを…っ!」と咎められても、「余が老中になるのだぞ…?」と返して半兵衛を絶句させ、そんな半兵衛の姿を静観する斉韶の姿が怖いというよりも切なかった。
 中庭を見渡せば複数の死体が転がっている残忍な場面なのに家臣は人形のように静観しているだけで、斉韶を取り巻く空気のなんとも穏かなこと!この異様さが強烈に印象に残ってます。

 そして、落合宿で刺客に行く手を阻まれた場面。
 ここは繰り広げられる殺戮にワクワクする斉韶、形振り構わず守ろうとする半兵衛の対比が虚しさや苛立ちを煽るのですが、2回目以降の鑑賞で半兵衛と同じ明石藩家臣である浅川十太夫(光石研)の頼りない姿にやられました。

 とにかく体を張って斉韶を守ろうとする半兵衛の必死ぶりも印象深いのですが、同じく自分なりに斉韶を守ろうとする浅川の凡庸ぶりが泣けるんですよ。
 半兵衛は島田新左衛門(役所広司)が殿の暗殺を企てていることを誰よりも察知していたから、刺客たちが攻撃を仕掛けて来ても冷静に殿を守ることが出来たけど、浅川は他の家臣と同様に"人を斬ったことの無い侍"だっただけに、刺客の罠に掛かる度に焦り及び腰になる頼り無さだった。

 そんな浅川が永倉左平太(松方弘樹)に斬られ、半兵衛に「殿を…頼みましたぞ…っ」と言い残して川に倒れて行った様を見て、浅川は浅川なりに命懸けで斉韶を守ろうとしていたんだと感じて同情しました。
 しかも、その場所に平山九十郎(伊原剛志)がやって来て死闘を繰り広げはじめたら、死に損なって落ち武者姿になっていた浅川が九十郎に斬りかかって致命傷を負せて、気が狂いながらも刺客を倒そうとした姿に人と人が殺し合う事の恐ろしさと虚しさを痛感。

映画『十三人の刺客』画像1 半兵衛も、浅川も、そして主君の暴君ぶりに抗議の割腹をした間宮も、それぞれ信念を持った良い人間だと思うんですよ。それが仕えた殿が殿だったばっかりに、人生をムチャクチャにされちゃって。
 傍から見れば「こんな暴君を黙認にするなんて!」と反感を買う面もありますが(だから刺客たちに家臣も「皆殺し」にされるわけで)、藩主に仕える家臣として…ましてや藩主が将軍の弟となれば絶対服従の封建社会の中で、大人しく従うことが当然であり義務なんですよね。でも、その藩主が「封建社会なんて馬鹿じゃねぇ!?」みたいなスタンスで大暴れしているんだから、ホントに家臣は堪ったもんじゃない。

 明石藩の人々のやり取りを見ていると、斉韶の暴君ぶりが際立つと言うより憎ったらしくてしょうがない気持ちで一杯になります。

 なんか殿語りというよりも、明石藩家臣語りになっちゃった(笑)
 でもさ、役所さんもプログラムのインタビューで語っていたけど、明石藩側も決して悪の軍団ではないから(むしろ封建社会の犠牲者たち)、権力者には逆らえない生き様の艱難辛苦ぶりに、今の自分達が置かれている立場を少し重ねたくなる部分もあるんだな。世襲制で権力だけ付けた無能な人間って、今も昔も憎々しい存在には変わりないもの。

 …えーと、殿についての語りは長くなりそうなので以下に続きます。←またかい!
 ホントに今回は有り得ないくらい長いですよ(汗)

web拍手


 明石藩のお殿様である斉韶が暴政の限りを尽くせるのは「将軍の弟」という立場があるからですが、だったら、その将軍の兄に「お前の弟は最悪最低だぞっ!」とチクッちゃえば良いじゃないか…といかないのが、この封建社会の怖いところ。将軍家は絶対的な存在だから、その血筋の人を表立って悪く言うだなんてタブー中のタブー。

 それどころか、将軍の兄は「斉韶を来年には老中に就かせよう」なんて言っている上に、半兵衛に先の将軍(斉韶の父)は「斉韶を頼む」と言っていたのだから、前将軍と現将軍が斉韶のことを目に掛けているということになる。そんな人間を、誰が表立って誰が裁けようか…。

 しかも、その事を一番理解していたのが斉韶本人なんだから一番始末が悪い。

 「自分のような人間が老中になるのだから徳川も長くない」と自分の取り巻く状況を客観的に捉えることが出来る斉韶は、決して馬鹿ではなく知能犯的な部分もある。だからこそ、兄である将軍を前にしたら普段の暴虐な振る舞いは抑え、しおらしい弟を見事に演じるだろうと安易に想像できるだけに腹が立つ(笑)
 この封建社会の中では自分に逆らえる者は少ない。そして、権力者の兄に対しては大人しくしていれさえしれば、その権力そのものを我が物にも出来る…って、考え付いちゃったわけでしょう。

 何が悔しいって、大人しく黙っていれさえすれば品良い端整な顔立ちのお殿様なんですよ。新左衛門じゃなくても、「大人しく飾りは飾られていれば…!」と思ってしまいますとも!

 でも、斉韶のことを「ホントに憎たらしい奴っ!」と思いながらも、彼の過ごしてきた環境を想像する限りでは、一概に斉韶だけが悪いわけでは無いことが判るから、憎たらしいと思う反面で虚しさも感じるんですよね。

 結局、斉韶は人生の中で常に「将軍の子供」or「将軍の弟」であって、一度も「松平斉韶」として扱っては貰えなかった。将軍家に相応しい贅を尽くした暮らしをしてきたけど、それは将軍家の人間だから大事にして貰えただけだから、斉韶自身を本気で愛してくれた人は居たのだろうか?ということになる。
 愛情は勝手に芽生えるものじゃなくて、物心付く前から愛情を与えられることによって、自分の中でも育っていくものだと思う。しかし、愛情を与えられずに形式的に育てられただけだとしたら、斉韶は一体どこで愛情を学べたというのだろう?そして、そんな人間がどうやって人に情を抱けるというのだろう?

 斉韶は愛情のない生活が当たり前の環境の中で育ったから、"寂しい"とか"恋しい"という気持ちを一度も抱いたことが無かったんだと思う。だから、他人が自分に対してどう思うかなんて考えすら働かなくなり、本当に機械のような他人に対してどころか、自分に対しても無感情な人間になってしまった。
 そんな人間が自分自身の存在をアピールしたいという欲求に駆られた時、考え付けることが「自分の存在アピール=暴れて注目される」という選択肢しか残されていないような気がする。

映画『十三人の刺客』画像 だから、刺客たちが自分の命を本気で狙っていると解った時の斉韶は、強がりでも何でもなく純粋に嬉しかったんだろうな~…と、「面白いっ!」という言葉は本音だったんだろうな…と、あの笑顔は斉韶にとって本当の笑顔だったんだろうな~…と思うと、憎たらしいと同時に悲しくなっちゃいますね。

 結局、斉韶は封建社会の歪みによって生まれてしまった人物。そんな人間を、封建社会を守らなければならない人間が暗殺するのだから、本当に虚しい以外のナニモノでもない。

 この作品がとんでもない暴君を倒して「やったぁ!」という気持ちになりながらも、それで全てから解放されたような満たされた気持ちになれないのは、そういう部分が多大に影響しているんじゃないかと思いました。

 そういう意味でも、只の悪者ではない松平斉韶…凄過ぎ!

 演じた吾郎ちゃんも、ホントにピッタリでしたね。
 狂人な暴君ならいくらでも演じられる個性派の役者さんがいらっしゃいますけど、あの斉韶の浮世離れした独特の存在感は稲垣吾郎ならではの存在感でしょう!しかも、あの黒目勝ちの眼の存在も大きい!普段なら「可愛いっ!」と思えるはずなのに、斉韶を演じている時の眼は無感情で心の闇そのものを映しているようにも見え、何を考えているのはサッパリ読めなくて薄気味悪くて怖い。

 インタビューなどで「現場でも殿みたいな感じの人(by 三池監督)」、「あれが吾郎ちゃんの本性でしょう(by 役所さん)」なんて冗談交じりに言われてましたけど、別に吾郎ちゃんが陰で人をグサグサするのが趣味♪の人だなんて思いませんが(爆)、斉韶と吾郎ちゃんがリンクする部分があるなとは感じました。
 そういう意味でも、「屈折した魅力があるから」という理由で稲垣吾郎を暴君にキャスティングした三池監督のセンスは最高です!

 海外の映画祭でのレビューも吾郎ちゃんの怪演ぶりが高評価なので、SMAPの稲垣吾郎というパブリックイメージを知らない人から見ても、ハマリ役に観えたというのは嬉しい。

 あと、最後に映画そのものとは関係が無い凄く蛇足なことになるけど…
 役所さんといい、市村さんといい、古田さんといい、沢村さんといい、イイ年齢の男性陣が普通に「吾郎ちゃん」呼びしていたのにはウケました。しかも言っている方も言われている方も違和感が無いんですよね。松方さんも「吾郎くん」と呼んでいたし、名前の方が呼び易いキャラなんだろうなぁ。
 あ、でも、市村さんは「吾郎ちゃん」呼びと共に、「ウチの殿が…」と常に「殿」呼びしていたのにもウケました。本当に役を演じていなくても忠義な男だわ(笑)

 そんな「ちゃん」呼び出来るくらい親しみのあるキャラであると同時に、殿のように近寄り難い浮世離れした雰囲気も合わせ持っていて、そういう部分も全て含めて「極悪な暴君・松平斉韶」がハマリ役だったんでしょうね。

 中途半端な映画好き人間(笑)の立場からしても、こういう悪役が邦画から出て来てくれたことは凄く刺激を受けたし、その役を吾郎ちゃんが演じていたというのがファンとして凄く嬉しいし誇らしい。
 この役を引き受け真正面から演じきった稲垣吾郎に最高の賛辞を送りたいし、キャスティングしてくれた三池監督やスタッフの方々に最大限の感謝を送りたいです。

 …いや~、語った、語った。
 ここまで読んで下さった方、本当に忍耐強い方ですぞっ!(笑)

テーマ:十三人の刺客 - ジャンル:映画

コメント
この記事へのコメント
通りすがりに時々読ませていただいています。今回は拍手!!!役者の輝く作品って大好き!
2010/10/14(木) 23:57:28
URL | じゅん #-[ 編集 ]
只今忍耐修行中
確かに。・・・吾郎ちゃん語りが本格化するまでが長い(爆)

私も長く語る方なので語り手の真意が見えてくるまでは読んでしまいますね。携帯小説みたいに

文節チョー短い


改行開けすぎ


なブログは逆に5行までが限界です。(^^;)
(スクロール手前までに主旨が見えないと読まない)

私が思うところでは、斉韶の養育・教育係がクズだったんでしょう。実際に将軍家の兄弟が全員評判が悪いとは思えませんし、環境は確かに大きいでしょうが、それだけのせいではないと思うのですよ。

いやー私は彼ほどちやほやされたことがないので、性格がそんな風に歪むのが贅沢な悩みに思えてしょうがないです(爆)

ヒネているのは三池監督に合い通じるものを感じますが(^^;)

吾郎ちゃんの演技に関しては、「危なげな(ナイーブ:繊細な)」性格の人物に共通項が見えますね。ただ、ここまで極端な人物像は想像していませんでした。それでも平然と行って違和感どころか「いつもやってること」の雰囲気が漂ってるのは驚きでした。

おっと、こっちまで長くなりそう(^^;)

なのでこれにて失礼つかまつるm(_ _)m
2010/10/15(金) 01:00:02
URL | soup #195Lvy4Y[ 編集 ]
>じゅんsan
はじめまして。
時々通りすがり…と書きながらもコメントを残して下さって感謝です♪
本当にこの作品は役者がそれぞれ輝いていましたよねっ。
2010/10/15(金) 22:50:20
URL | ななんぼ@管理人 #qYsjHJMI[ 編集 ]
>soupさん
こちらにもコメントを残して下さってありがとうございます。

> 確かに。・・・吾郎ちゃん語りが本格化するまでが長い(爆)

でしょ?
だから最後まで読まれた方は忍耐強い方なんですよ(笑)

斉韶の父親に当たる徳川家斉は、側室の数も凄く腹違いの子供が50人以上いたにも関わらず半分も成人しなかったんですよ。そのせいか、映画『雷桜』の主人公である斉道は斉韶の兄に当たるのですが、彼は癇癪持ちだったようで、家斉の子供は生まれながらに問題ありな子が多い設定にしやすいみたいですね。

斉韶は冒頭で「生まれながらの残忍な性格…」と評されていたくらいですから、教育係などが最初から仕事を放棄していたという可能性もありますし、恵まれた環境に生まれながらも人材には恵まれなかったということでしょうか。そういうバックグラウンドが想像できてしまう分、なんとも遣る瀬無いキャラクターと感じるのかもしれません。

凄く三池監督らしいキャラでもあったし、稲垣吾郎の存在とリンクする部分もあったし、フィクションなんだけど妙なリアルさがあって、それが何とも言えない雰囲気と魅力を醸し出していたと思います。

ああ、ここでも語り過ぎ(笑)
2010/10/15(金) 23:23:11
URL | ななんぼ@管理人 #qYsjHJMI[ 編集 ]
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://nananbo.blog59.fc2.com/tb.php/277-d08eb9ec
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック

copyright © 続・蛇足帳~blogばん~ all rights reserved.


template by http://flaw.blog80.fc2.com
Powered by FC2ブログ