観たい作品が何本かあってその中でも自分の都合と上映時間が合ったのが『相棒~』だったんですが、今年初の映画鑑賞とはいえ、この作品は去年のX'masシーズンに公開された作品なんですよね。既に公開から1ヵ月近く経っているにも関わらず、レディースデイということもあってか客席は8割がた埋まっていて、このシリーズの人気の高さを物語っていましたよ。さすがですね~。

ある夜、警視庁本部の会議室に男が押し入り、田丸警視総監(品川徹)ほか幹部12名を人質とした篭城事件が発生する。
偶然にも事件直前の犯人と遭遇していた神戸尊(及川光博)は直ぐに杉下右京(水谷豊)に連絡を取り、杉下は独自の情報収集を行い篭城犯の素性を突き止める。しかし、膠着状態だった会議室内に銃声が響き渡ったことでSITと機動隊が強行突破に踏み切り、篭城事件は犯人が射殺されるという形で幕を閉じた。
ところが、犯人が何の要求もしてこなかった事から何故篭城事件を起こしたのか理由が判らず、人質になった警察幹部は一様に曖昧な証言をするに留まり、犯人の目的も解明されないまま捜査が終わりそうになってしまう。そこに杉下が疑念を抱き、神戸と共に犯人が篭城事件を起こした理由を探っていくが、そこにはある陰謀が仕組まれていたことに辿り着く。
という話で、前作の『相棒-劇場版-絶体絶命!42.195km 東京ビッグシティマラソン』が庶民を巻き込んだエンターテイメント性の高い作品としたならば、今作の『相棒-劇場版II-』は発端が警察内部で起きた事件だっただけに閉鎖的な雰囲気が強く、互いの腹の探り合いや駆け引きで展開していく内容で人間ドラマがメインになった作品だという印象を受けました。

どうしても人気シリーズともなると、「これって前作と同じような展開じゃない?」というお約束的な展開が目に付いてしまうものなんですが、今作は初放送から10周年を迎える今だからこそ出来る内容に敢えて挑戦してきたとようも見えたな。
あれだけ人気を博した亀山という天然系熱血キャラの後継となった神戸は、クール系でインテリっぽいから少し右京さんと被るんじゃないか?と当初は感じましたが、まだ若いだけに時に感情的になる部分や右京さんとは違った形で上の人間に関わっていくところなど、しっかりキャラが立っているし、『相棒』というシリーズを長期化していく上で良いカンフル剤になっているんじゃないでしょうか。私はミッチーが作り上げた神戸尊というキャラクターは好きです。
まぁ、所轄との揉め事みたいなお約束的なやり取りが希薄になっちゃったのは少し残念なところではあるんですけどね。

だからこそ、右京さんの最後の台詞も凄く重みがあるんですよね。エンディングはちょっと唐突な終わり方だとも感じましたけど、「新たな挑戦の始まり…」のようにも感じて、まだまだ『相棒』シリーズは続いて欲しいなって思ってしまいましたもの。
前作が初映画化ということもあったんでしょうけど、かなりスケールの大きい内容だっただけにエンターテイメント性や痛快さを求めるのならば前作の方に軍配が上がるとは思うんですが、事件は一段落したはずなのにスッキリとしないモヤモヤ感が残るところや、今後の右京さん…特命係の動向が気に成る度合いからいえば今作の方が上だと個人的には感じています。
それに、今回は警察内部で起きる事件がメインなので全体的にシーンが閉鎖的で、「これだったら前後編に分けてTVシリーズでやっても良かったんじゃないの?」とも思った部分もあったんですが、ラストに衝撃の展開がありまして、これは10周年目を迎えた記念の映画で持ってくるしかないよな…って思うしかないくらい本当に衝撃的なシーンなんですよ。
物凄いネタバレになるので詳しくは語れませんが、「ええ~っ、こ、こんな結末なの…?」と色んな意味で唖然としてしまいましたね。これもスタッフ側の狙いであり、今後への挑戦なんでしょう。
むしろ、あまりに衝撃的な結末で、それまでの物語が全部頭の中から吹っ飛んでしまったというのもあるかも(笑)

今回も右京さんとのお食事シーンがあって嬉しかったわ(笑)。欲を言えばもうちょっと観たかったけど、それだと話の本筋から離れ過ぎちゃうからね。いわゆる"遊び"的なシーンでも、しっかり物語の核心に触れていたりするところが『相棒』シリーズの良さでもあると思います。
とにかく、「スケール感が小さくて内容としてはTV向き?」という感も正直ありましたが、「やっぱり上に立つ人間って、下の人間の言うことなんて揉み消すことしか考えてないのね!キーッ!」みたいな焦燥感を煽られると同時に、「どこまで自分の正義を貫くか?」というのも考えさせられ、そして物語の最後には、その正義を突き詰めた結末に唖然となるという、かなり見応えがあって余韻も残る面白い作品でした。
なんだかんだで10年続けていきながら、作品のクオリティをここまで維持できるって凄いですよ。
「右京さん…特命係にとって一番長い夜があんな夜だったとは…」→★★★★
【追記】
なんかTVで流れている予告CMでもネタバレをしているみたいなので、以下、ネタバレを含む感想を書いています。これから作品を鑑賞される方や、ネタバレが嫌な方は読まないで下さいね。
※以下は『相棒-劇場版II-』の結末のネタバレを含んでいますので、くれぐれもご注意下さい!
やはり、今作の一番の衝撃的な展開は小野田官房長官の結末でしょう。
まぁ、劇場のトレイラーとかの時点で「ん?誰かのお葬式?」と思わせるシーンもしっかり入っていたので、"誰かの死"は暗示されてはいたのですが、本当にまさか…の展開ですよ。
この10年に渡って杉下右京を翻弄し、時には翻弄されていた小野田官房長官の何という呆気ない死に様には唖然としました。もちろん、いくら自分の正義や理想を貫く為だったとはいえ今まで腹黒いことを散々やってきた人なんですから、まともな死に目には合えないだろうとは思っていましたけど、シリーズ半ばで大したドラマ性もなく内部の人間に恨みを買って呆気ない殺され方で幕を閉じるとは想像すらしていませんでしたからね。
でも、逆にあの呆気無さが良かったのかもしれません。もし、あそこでドラマチックな官房長官の死に様を演出していたとしたら、そこに物語が集約されてしまって今までの話なんてどうでも良いって感じになってしまう可能性が高かったでしょう。

その後、右京さんが特命係の部屋で一人クラシック曲を聴き、何かを決意したような顔付きになったシーンが印象的だったのですが、これから巨大な権力に独りで戦うことになるかもしれないという予兆にも見えて、なんか遣る瀬無かったなぁ。
小野田官房長官の存在は右京さんが自身の正義や信念を貫く為の指標でもあったような気がするだけに、今後の右京さんが警察の人間としてどう動いていくのか、期待でもあり不安でもあります。もちろん、今は相棒の神戸の存在がいるので大丈夫だとは思うんですけど、第二、第三の小野田官房長官ような存在は次から次へと出てきそうだから、その時に右京さんがどう動くのか…そこに注目ですね。
